Allergan社の眼瞼痙攣治療薬BOTOX。
日本国内ではGSK社が販売。
作用機序は以下。
- A型ボツリヌス毒素が重鎖部分においてコリン作動性運動神経終末に結合し、エンドサイトーシスにより取り込まれる。
- エンドソーム内にて軽鎖部分が切り出され、運動神経終末上受容体SNAP−25に結合し、アセチルコリン放出を抑制することで、過活動を制御する。
承認後、uncontrolled blinking, certain neck muscle spasms, excessive underarm sweating, and wrinkles between the eyebrowsなどの追加適応が認められ、現在では年間$1.3 billionの売り上げを誇る。
しかしながら、本記事で取り上げられているように、そのmarketing方法がcleanではなかった疑いが持たれ、その関連の訴訟により$600 millionを賠償することが決定している。
その内訳は、(1)$375 million to the government; FDAに認可されていない用途(脳性麻痺児童の四肢痙攣/疼痛の軽減)での処方を宣伝したとの罪、(2)$225 million to resolve civil charges; Medicare(65歳以上人口を対象とした公的医療保険機関)とMedicaid(低所得者層を対象とした公的医療保険期間)に対し虚偽の報告をした罪。
これ以外にも、BOTOXのoff-label use(偏頭痛)を促進するために権威有る神経学者を登用した宣伝映像を使用したり、Ogilvy Healthworldという第三者機関を利用しNeurotoxin InstituteなるWeb-siteを立ち上げ、実際に処方を行った医師に見返りを支払った等の嫌疑をかけられている模様。
その一方で、BOTOXは偏頭痛適応をUKにて取得しており、これだけの違法行為が明るみに出ている米国においても承認を得られると期待しているとのこと。
偏頭痛に対しBOTOXを用いる場合、$1000-2000の費用で、頭や首、肩など30-40カ所に注射し、効果は3-4ヶ月持続するとのこと。
BOTOX注を受けた患者が月120時間偏頭痛から解放された一方で、placebo群は月80時間に留まる等、有る程度の有効性は示されている模様。
FDAはボツリヌス毒素が頭部以外の部位に到達した場合、呼吸困難などを引き起こす危険性がある点などを盛り込んだblack box warningを付与するよう要請している。
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所感
まず、製薬業界にいる人間として、このような企業行為が罰金さえ支払えばまかり通る世界なのが心苦しいし、多くの犠牲を払いながら企業利益と患者保護のバランスを取るべく調整されてきた一連の新薬承認制度を無下にするような非人道的行為に自分の会社が手を染めていないこと、そして染めることが無いよう祈るばかり。
特に今回はボツリヌス毒素という非常に危険な有効成分を扱った薬剤であり、患者より企業利益が高い優先順位を持つような会社は長期的には必ずや倒れるのが筋である。 | ||||||||||||||
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# GSK社解説サイト
# http://en.wikipedia.org/wiki/Botulinum_toxin
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